中学生版マンガで考えようジェンダーギャップ 出石中学校の2年生が制作


ページ番号1033081  更新日 令和7年4月7日


ジェンダーギャップを中学生が漫画で表現

 2024年11月、出石中学校2年生79人を対象に、豊岡市スクールソーシャルワーカー岸本京子さんによる「ジェンダーギャップ解消について考える〜生活・学校の中で「はて?」〜」と題した学習会を開催し、学習の成果として短編漫画を制作しました。学習会で紹介された「早く絶版になってほしい #駄言辞典」(日経xwoman編集)の内容を参考に、日常生活や学校で感じた性別による固定観念への気づきをストーリーにしています。このページでは、校内選考で選ばれた10作品を紹介します。

 作品について、ジェンダーギャップ解消豊岡市地域啓発推進アドバイザーである、萩原なつ子さん(国立女性教育会館理事長)から講評をいただいています。

 中学生が表現したジェンダーギャップへの気づきや疑問を、ぜひ作品を通じて感じ取ってみてください。

[画像]画像:駄言辞典(11.6KB)
[画像]画像:図書館での展示(107.1KB)

作品一覧(五十音順)

駄言「女は運転が下手だから」

タイトル「俺が下手なんじゃない」

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作:足立誠仁さん

 この学習を通して「同じ人間なのに、性別によって、こんなに生活や仕事などで影響を受けていることがあるんだ」と、とても驚きましたし、納得もしました。それは、大人だけでなく子どもにも「男子はこれ、女子はこれ」「前からこうだ(らしい)」と、無意識の偏見があるからです。今回『女は運転が下手だから』という駄言を取り上げ、漫画を描きました。
 僕は「男性は○○が得意。女性は○○が苦手。」などと、決めつけられることは、この世の中にはないと思います。目の前にいる人を、一人の人間として見ていくことが大切です。この漫画が、ジェンダーギャップ解消につながればいいなと思いますし、僕自身も偏見に囚われず、生きていきたいと思います。

萩原なつ子さんより

 「女性は運転が下手」というバイアスはどこからきたものでしょうね。運転スキルの上手下手は性別ではなく、個々人の問題ですから。バイアスを解消することが大事ですね。

駄言「いつ結婚するの」

タイトル「結婚は絶対?」

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作:小操芽生さん

 私は『いつ結婚するの』という駄言を取り上げ、漫画を描きました。「結婚することで幸せになるわけじゃない」「自分の生き方は、自分で選択したらいい」「自分の幸せの大きさは、他者には測れない」という思いを込めています。
 この学習を通して「何気なく発した言葉でも、だれかの心の深いところに届いてしまうんじゃないか」ということも考えました。それが、だれかを傷つけてしまうかもしれませんが、励まされることもあるかもしれません。
 私は、言葉の重みを自覚し、周りの人たちの幸せを願える人になりたいです。

萩原なつ子さんより

 結婚するのが当たり前、結婚したら子どもを産むのが当たり前という価値観や思いこみは、若者、とくに女性を苦しめますよね。親世代には「もはや昭和ではない」ことを肝に銘じてもらいたいものです。私の人生は私が決める! 格好よいです。

駄言「家事は女性」

タイトル「休みの日の家事」

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作:島田大暉さん

 僕は「家事は女性」という駄言を取り上げ、漫画を描きました。家事は、僕にとって一番身近な例だったからです。この漫画を読んだ人には「家事は女性」だけではなく「力仕事は男」や「女は運転が下手」などといった駄言をおかしいと思い、ジェンダーギャップ解消に関心を持ってほしいです。
 この学習でよかったことは、以前から何となく感じていた男女の「おかしな差」について学ぶことができたこと。そして、僕の漫画を読んでくれた親とジェンダーギャップについて話すことができたことです。

萩原なつ子さんより

 もしかしたら、お母さんもお仕事もしているという設定かしら? どうして私が「女」というだけで休日に家事やるのよ、と余計に怒りたくなりますよね。怒り心頭のお母さんの顔がめちゃくちゃリアル! お父さん、家庭科やり直しましょう。ジェンダーについて学びましょう。

駄言「女の子みたい/男の子みたい」

タイトル「ランドセルの色」

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作:瀬尾寧来さん

 私は「女の子みたい/男の子みたい」という駄言を取り上げ「私たち若い世代も、ジェンダーに関する意識を変えないといけない」と思い、ランドセルの色を例にして漫画を描きました。
 この学習を通して、普段私たちが何気なく発している言葉にも「無意識の偏見」が含まれていることに気がつきました。また、話しているときも「これは、どうなんだろう」と、考えるようになりました。
 私も、これまでの人生の中で、このギャップの影響を少なからず受けています。これからは、幅広い世代にこの問題が認められ、だれもが生きやすい社会になればいいなと思っています。

萩原なつ子さんより

 はい。色に性別はありません。親の選びたい色と子どもが実際に選びたい色が違うという調査もありましたよね。子どもの気持ち「子どもの意見表明権」を大事にしたいですね。ちなみに、私は小さい頃からブルーが大好きです。

駄言「女みたい」

タイトル「東京旅行に行こう!」

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作:前硲風理さん

 私の身近に、髪が長く、その見た目から、よく「女っぽい」と言われている男の子がいます。私の弟です。弟は、それを不快に感じているようです。それで今回、『女みたい』という駄言を取り上げてみました。
 この漫画の主人公は、いわゆる「女子みたいなこと言ってる男子」です。私も弟に駄言を言ったことがあるので、これからは気をつけていこうと思います。

萩原なつ子さんより

 面白い視点ですね。行きたい場所に性別は関係ないはずなのに、こんなところにもバイアスが! 東京に来るときは連絡ください。行きたい場所に遊びにいきましょう。

駄言「主婦って暇でしょ?昼間何してるの?」

タイトル「父の休み」

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作:増田蒼大さん

 僕は「主婦って暇でしょ? 昼間何してるの?」という駄言を取り上げ、漫画を描きました。平日の主婦の忙しさが伝わるよう、休日の夫は、昼間からゴロゴロして、手伝いをしないキャラにしました。この漫画を描きながら、いつも忙しそうにしている母の姿が頭に浮かんできました。僕も母の気持ちがわかる息子になり、家事をしていきたいと思います。

萩原なつ子さんより

 家事、育児など、暮らしと生活を支えるケア労働には休みはありません。切れ目のない労働であることをお父さんもちゃんと理解して「手伝う」のではなく、自分事として、主体的に「洗い物」して欲しいですね。

駄言「女なんだから、家事ぐらい効率よくできるだろ?」

タイトル「家事をするのは、母親だけ?」

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作:松原笑苗さん

 私は「女なんだから、家事くらい効率よくできるだろ?」という駄言を取り上げ、漫画を描きました。
漫画の中では、家族会議が開かれています。家事をするのは母親だけでしたが、分担することで、誰かに負担が偏ることがなくなっています。こうすることで、現実でも、

というメリットがあります。
 家族の一員として、積極的に行動へ移していくことが大切だと気づきました。

萩原なつ子さんより

 固定的な役割分担意識が根強いお父さんですが、家庭科の男女共修世代ではないのかしら。話し合いの場を設けるのはとてもよいアイデアですね。納得の上で、お互いを思いやり、助けあいながら楽しい生活を目指したいものです。

駄言「力仕事は男性だよね」

タイトル「男なんだから」

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作:水嶋一颯さん

 僕は「力仕事は男性だよね」という駄言を取り上げ「多くの人にジェンダーギャップのことを知ってもらい、解消につなげたい」という思いを込め、漫画を描きました。それは、僕自身が、この学習をするまで、ジェンダーギャップについて何も知らなかったからです。そして、自分自身に「無意識の偏見」があったことに気づくことができました。
 世の中には、まだまだたくさんの駄言があります。今回の学習を生かして、身近な駄言には、気づけるようにしていきたいと思います。

萩原なつ子さんより

 男だから重い物を持てるというのも、バイアスですね。私は夫より力持ちですよ。それから、どうして男性だけが評価されて、昇進しちゃったのかしら。上司のダブルスタンダード(二重基準)が問題かも。

駄言「女子は数学が苦手なんだから…。」

タイトル「イメージ?偏見?それって親の勝手なの?」

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作:村尾優羽さん

 私は「女子は数学が苦手なんだから…」という駄言を取り上げ「勝手なイメージは、だれかの生き方を変えてしまうかもしれない」と訴えたくて、この漫画を描きました。
 以前、祖母が「女の子なのに、理科の勉強がんばってて偉いね」と、褒めてくれたのですが「『女の子なのに』って、そんなイメージが祖母世代にはあるのかな」と、驚きました。しかし、私自身、暗い色のランドセルを背負った女の子を見て「女子らしくない色だな」と、思ったことがあります。「女子は赤」と無意識に思ってしまっていたからです。
 この学習で気づいたことは、きっとだれしも「無意識の偏見」を持っているということです。世代は関係ありません。私は「公平とは何か」ということを考え、世の中のジェンダーギャップ解消を進めていきたいです。

萩原なつ子さんより

 理数系教科の到達度に男女差がないことは調査研究において実証されているのに、親や教員の側の女子は理数系が弱いという根換なき偏見により女子生徒に対して、文科系への進路指導が行われる傾向があります。その結果として、ICTなどの科学・技術への機会の不平などが進路、職業選択にまで影響をおよぼします。バイアスをもっていないお兄さんのおかげで、お母さんが気づいてくれてよかったです。

駄言「トップは女性にはできない」

タイトル「昇格」

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作:森垣かえでさん

 私は「女性はトップにはできない」という駄言を取り上げ、漫画を描きました。なぜかというと、豊岡市も女性管理職の割合が小さいという現実を知ったからです。実際、どのような事情があり、女性が少ないのかはわかりません。
 しかし、女性でも男性でも、部長や課長などになり、「みんな(組織)を引っ張っていきたい」「もっと仕事がしたい」という人がいる(いた)と思います。
 もし、今「女性だから」という理由で「あきらめよう(あきらめてもらおう)」「やめとこう(やめてもらおう)」という人たちがいるなら、もう一度考え直してほしいと思います。
私は、ジェンダーギャップ解消の学習をして、学んだことを周りの大人に伝えていきたいと思います。

萩原なつ子さんより

 能力主義といいながら「女性は半人前扱い」のバイアスが根強く残っています。男性優位社会を形成している、古い価値観を内面化しているオールドボーイの意識変革と行動変容を起こす働きかけが大事ですね。

教員の声

稲垣先生(担任・企画担当)

 ジェンダーギャップ解消は、人権教育の一貫だと思って計画しました。自分や他者の「命への共感」がより良い社会を実現していくために、必要だと確信しているからです。

 生徒たちには、豊岡市の実態と世の中の「駄言」をベースにジェンダーギャップ解消の必要性について説明していただきました。豊岡市の実態については、「?」を頭の上に浮かべながら話を聞く生徒が多かったですが、「駄言」の話になると「うんうん。わかるわかる。」と、実体験と今回の学習課題が結びついてきたようでした。

 子どもたちが作った漫画はお互いに読み合い、学年コンペを行いました。生徒らは、自分たちの将来(人生)に関わることとして、真剣に今回の課題に取り組んでいたと思います。課題は、生徒らのジェンダーギャップ解消の必要性が「(無意識でも)差別はいけないから」という方に偏ってしまったかなという印象があることです。

 これから「フェアネス(公正さ)の欠如」という視点を持って、今の世の中にあること・起きていることを自分ごととして捉え、自らのキャリアを考えていってほしいと思っています。今回、20代の担任ふたりとこの学習に取り組めたことがよかったなと思っています。今、一緒に働いている後輩やまだ顔も知らない仲間たちが一層生きやすい、生き生きと活躍できる世の中になるように、これからも一生懸命勉強したいと思います。

田中先生(担任)

 ジェンダーについて自身の中で「こういうもの」と決めつけているつもりはなかったのですが、無意識のうちにそう考えてしまっていることに気付かされました。その原因として、育ってきた環境が大きく影響していると思います。自身の家庭で「母親が家事・育児、父親が大黒柱」として稼いでいる様子を見ていると、性別によって仕事を決めてしまう事実に違和感を覚えながらも、自然とそう動いてしまっている自分がいることに気付きました。

 また、昔からの習慣が深く根付く田舎の地域にとっては、新たに家庭での役割を再構築することは難しいと感じています。そんな中で、ジェンダーギャップについて、きちんと考え直すことで、生徒が今後について少しでも「新たな当たり前」を学習できたことは良い機会であったと感じています。

 昔からの「男は?」「女は?」といった認識には、何かしらの根拠のもとに成り立っているように思うので、その原因について理解を示しながらも、自身のこれからをより良く支え合って生きていけるような選択をしていきたいです。

山内先生(担任)

 生徒たちは、はじめは「ジェンダーギャップってなんだろう、よくわからないな」という子ばかりでした。しかし、講義をしていただいたり、自分たちで調べたりしていくなかで「こういう言葉もあまり良くないんだ。なんでなんだろう」「この言葉はこういう人が傷つくんだな」といったふうに、さまざまな気付きや学びができているようでした。

 ジェンダーギャップについての漫画を作成する中で、現実的にどんな場面でジェンダーギャップ問題が存在しているのかを具体的に考えるきっかけになったと思います。例えば、「主人」という言葉も最近は良くないとされていると、講義の資料に書いてありましたが、恥ずかしながら僕も生徒も「主人」がなぜ良くないのかわかりませんでした。そこで生徒が関心を持ち調べたところ、「主人」が男が家の主な人であるというイメージに繋がるから良くないのだとわかりました。生徒たちは「え?考えすぎじゃない?」「でも確かにそういう意味の言葉って知ったら、あまり良くない気がしてきた」といったような感想を口にしていました。ジェンダーについて見つめ直すきっかけになったと思います。


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くらし創造部 多様性推進・ジェンダーギャップ対策課 ジェンダーギャップ対策係
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